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令和元年・49週~ボツリヌス症~

今週の注目疾患   令和元年・第 49週(2019/12/2~2019/12/8)

【ボツリヌス症】

2019 年第 49 週に県内医療機関から 1 例のボツリヌス症の届出があった。
ボツリヌス症はClostridium botulinum(ボツリヌス菌)が産生するボツリヌス神経毒素 (botulinumneurotoxin)によって起こる全身の神経麻痺を生じる神経中毒疾患である。
C. botulinum 以外にも、C. butyricum、C. baratii、C. argentinense においても類似した毒素を産生する株があり、ボツリヌス症を起こす原因となる。
ボツリヌス毒素はコリン作動性神経末端からのアセチルコリンの放出を抑制し、その結果、神経から筋肉への伝達が障害され麻痺に至る。
ボツリヌス菌は土壌、海や湖沼などに広く分布しているが、増殖は低酸素条件が必要な偏性嫌気性菌である。
環境中では、ボツリヌス菌は熱や乾燥に強い「芽胞」と呼ばれる細胞構造を形成し、厳しい環境下での生存を可能としている。
芽胞形成状態では増殖は出来ず、低酸素状態に置かれると発芽・増殖が起こり、毒素が産生される。
ボツリヌス症は現在4類感染症として全数把握対象の疾患となっており、以下のような病態が知られている。

1.食餌性ボツリヌス症(ボツリヌス食中毒)
2.乳児ボツリヌス症
3.創傷ボツリヌス症
4.成人腸管定着ボツリヌス症
5.その他(上記にあてはまらない病態(医原性、生物兵器の吸入等))

国内での届出の大半は食餌性ボツリヌス症もしくは乳児ボツリヌス症である。
食餌性ボツリヌス症は、ボツリヌス毒素により汚染された食品を摂取することにより発症する。
野菜や魚などに付着した芽胞は真空パック詰食品、缶詰、瓶詰めや発酵食品内といった酸素の少ない状態となると発芽し、加えて温度、水分、中性~アルカリ性の pH、糖やたんぱく質等の栄養分の条件が整うと増殖しボツリヌス毒素が産生される。
ボツリヌス毒素が産生された食品を非加熱・不十分な加熱で喫食すると毒素が腸管で吸収され、食餌性ボツリヌス症が引き起こされる恐れがある。
ボツリヌス毒素は十分な加熱により失活するが、芽胞は 100℃の長時間加熱でも壊すことが出来ない。
常温保存可能な容器包装詰加圧加熱殺菌食品(レトルトパウチ食品)は、芽胞も失活する 120℃4 分以上に相当する加熱加圧処理がなされているが、こ
れ以外の密封された食品は保存方法の十分な確認が必要である。
要冷蔵・要冷凍の真空パック食品を誤って常温保存しボツリヌス毒素が産生され、喫食前の不十分な加熱が重なり、ボツリヌス症の原因となった事例が報告されている。
食餌性ボツリヌス症の潜伏期間は、6 時間から 10 日間(通常 18 時間から 48 時間)で発症する。
潜伏期間が短いと一般的に症状も重い。
典型的な臨床症状は、眼瞼下垂、複視、眼筋麻痺、嚥下障害、構音障害等の脳神経障害である。
消化管症状(嘔吐、腹痛、下痢等)を認めることもあり、すぐにこれらの症状は便秘となる。
意識は清明であり、感覚障害はない。
病状が進むと、弛緩性および対称性の麻痺が、頸部、肩、上肢(上腕から前腕へ)、下肢(大腿から下腿へ)の筋肉へ及ぶ。咽頭筋の麻痺による気道閉塞と、横隔膜および呼吸筋における麻痺は呼吸機能障害を引き起こす。
症状は軽度の脳神経障害のみの場合もあれば、すべての随意筋において麻痺が起きる場合もある。
ボツリヌス症は人工呼吸器によるサポートが必要な重症となることもあれば、ボツリヌス症に気づかない軽症例もある。
治療においては抗毒素の投与が行われるが、原因食品をともに接種したヒトがいる場合は、症状がなくても、ボツリヌス抗毒素の使用について検討する。
乳児ボツリヌス症は乳児特有の疾患であり、1 歳未満の乳児がボツリヌス菌芽胞を経口的に摂取し、消化管内で増殖した菌により産生されたボツリヌス毒素によって発症する。
県内では 2015 年に乳児ボツリヌス症の届出を認めている。
過去の事例ではハチミツ摂取が原因と考えられた症例が報告されており、ハチミツは 1 歳未満の乳児には与えないよう注意する必要がある。
なお、ボツリヌス菌がハチミツの瓶中で増えるといったことはなく、毒素が産生されるといったことはない。
近年はハチミツ摂取歴のない事例が多く、多くの事例で原因は明らかでない。
乳児ボツリヌスでは、乳児の腸内でボツリヌス菌が増えるため、乳児が回復したあとも、場合によっては数ヶ月にわたり便とともにボツリヌス菌が排泄される。
そのため、退院した後も、周囲に 1 歳未満の乳児がいるような場合は、オムツを交換するときに周囲を便で汚さないようにする必要がある。
ボツリヌス菌の芽胞はアルコールなどの消毒は無効なので、オムツ交換の後は、石鹸と流水でよく手を洗うことが重要である。

参考・引用
国立感染症研究所:ボツリヌス症とは
>>詳細はこちら

【千葉県感染症情報センターより参照】
(令和元年12月11日更新)

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